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理事長ブログ

介護の原点

2016-03-22
 年度末を迎え憂鬱な3月がそろそろ終わる。東京では昨日桜が開花した。
 
 快進撃を続けてきた「プロスペクトガーデンひたちなか」は昨年7月から失速し、赤字体質に陥った。どうしてそのようなことになったのかを含めて、改めて「介護そのもの」および「介護老人保健施設」について考えてみた。
 
 わが国では、長い間、高齢者に対する福祉政策は医療で代用されていた。お年寄りはちょっと体の調子が悪いとすぐ病院にかかった。自宅で生活できないお年寄りは長期入院した。いわゆる社会的入院である。このままでは医療保険がパンクするので、国は介護保険を創設し、介護保険の範囲で医療ができる「介護老人保健施設(老健)」が誕生した。創設期には老健は「中間施設」と呼ばれた。特養のような介護施設と医療施設の中間の施設という意味であろう。従って老健の職員の設置基準には、介護施設であるにも拘わらず、常勤の医師、看護師、リハビリ職員が必須である。
 
 医療報酬は医療を施行しただけ支払われるいわゆる出来高払いであるが、介護報酬は医療報酬と違って、定額であるため、たくさんの薬を服用している場合や、定期的にいろいろの血液検査を行うと、施設の収入は減少する。即ち、老健とは介護施設でありながら医療施設の役割を担わされ、しかも医療費は介護報酬に含まれ、ほとんど支払われない施設ということになる。
 
 我がプロスペクトガーデンひたちなかに入所してくる高齢者は殆ど全て病院から転院してくる。家族が申し込んで入所するのであるが、実際は、病院から病院への紹介入院と何ら変わるところがない。当然、医療情報提供書がついて来る。入所者は平均すると約8種類の薬を服用している。入所して、生活が落ち着くと服用する薬剤は約3種類になる。5種類は無駄に服用していたことになる。中には、薬を全く服用しなくても生活が落ち着いただけで、元気になられる方もいる。医療保険では投薬も含め診療行為は全て報酬が伴うので、医療施設ではこのような無駄が当然のように行われている。
 
 まず、病院と介護施設の違いについて考えてみよう。当たり前の話だが、病院は病気を治すところである。病気が良くなった患者さんが退院する一方で、病気が良くならず亡くなる患者さんもいる。良くなって退院する時には「退院おめでとう」「治療していただいて有難うございました」といった言葉が飛び交い、亡くなった場合には「力が及ばず残念でした」「手を尽くしていただいて有難うございました」といった言葉で、締めくくられる。つまり、病院には解決があり、結末がある。だから、患者も医療側も全力を尽くすことが出来る。
介護施設には自宅で介護を受けられない人たちが入ってくる。しかし、そこには「介護は在宅で行われるべきだ」「在宅の方が質の高い生活が出来る」といった盲信や行政の指導があり、従って、「在宅復帰」を達成している介護施設が良い介護施設ということになる。一定以上の在宅復帰率を達成すると介護報酬に加算が付くので、勢い介護施設側も在宅復帰に血眼になる。昨年のプロスペクトガーデンはまさに「在宅復帰強化施設」として胸を張っていた。
 
 しかし、本当に介護は在宅で行われるべきなのだろうか?介護は病気の治療と違って、到達点がない。毎日毎日の生活が介護なのだ。介護を在宅で行うためには、自宅の改修、家人の介護技術習得、病院への送迎など、家庭における様々な準備が必要である。家族の介護に費やす労力も考える必要がある。このようなことが解決されて、在宅で生活する準備が整い、施設でのリハビリが功を奏して在宅復帰できたとしても、老健では介護費用に含まれていた医療費が、在宅では、医療保険による出来高払いの医療を受けることになり、多くの薬を、また、高価な薬を投与され医療費がかさむ事にもなりかねない。
昨年4月から11月初旬までにプロスペクトガーデンから在宅復帰した27人の利用者にアンケート調査をしたところ、12月時点で約半数は他の介護施設に入所していることが判明し愕然とした。無理な在宅復帰は、家族の犠牲を強いて、医療費を無駄に使い、結局は、また、入院、施設入所への道をたどるのではないだろか。
 
私の考える介護の基本は、「自宅に居るような施設介護」である。現代は家族が核家族化し、住宅の狭小化もあり、家庭で介護する能力は非常に低下している。もちろん、自宅で家族に囲まれて介護生活が送れるならそれが一番良い。しかし、無理して在宅介護を目指す事はない。介護が必要な高齢者を施設に入所させて、家族が一緒になって施設での介護に協力し、時には自宅に外泊したり、外出したり、家族が介護の苦労から解き放たれて家族自体の生活が充実する事が、結局、施設に入所して介護を受けている方をも幸せにすることではないかと思う。
 
 在宅復帰率という数字に踊らされることなく、本当に家に帰る方だけを家族の元に帰し、在宅に帰れない方には、家族と協力しながら、束の間の間でも、外泊や外出をさせてあげたい。
また、家族に充分な理解や介護力があって、在宅復帰できた方には、更に自宅でより良い介護が続けられるように、デイケアの利用や訪問介護などを組み合わせて施設でも応援していきたい。そして、家族には、在宅での介護に負担を感じたら、遠慮なく、施設のショートステイなどを利用していただくよう、施設の敷居を低くして、家族をも応援したい。
 
 一旦施設に入った利用者は、たとえ在宅に帰られても、それは一時的であって、また施設に戻られると考え、血のつながった肉親のように一生面倒を見てあげたいというのが私の介護の原点である。
 
 昨年7月からのプロスペクトガーデンひたちなかの失速は、介護制度や保険制度に過度に反応し、介護の原点を踏み外してしまった事に一因があるような気がする。
 
 今年は申年だ。私が医師になって間もなく亡くなった父は明治41年生まれの申年、生きていれば108歳だ。入所している「私の母のようなおばあちゃん」が作ってくれた猿を見ながら、介護の原点をかみしめた。
 
施設の桜が待ち遠しい。
 
平成28年3月22日 理事長 森田隆
入所者が作ってくれた猿のお守り
プロスペクトガーデン3Fから見た施設の桜

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