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✎理事長ブログ

真夏の夜の夢

2015-08-01
 暑い夏は大好きだが、今年の暑さは今までになく鬱陶しい。酷暑と言っていい。鬱陶しいのは、暑さだけでなく日本の政治の手続きの貧困さにも原因がある。前政権の民主党時代もそう感じたが、現政権に代わってからはさらにひどくなった。今年の夏の国会中継は最悪の舞台中継だ。寝苦しい中で見た真夏の夜の夢は、私は戦争を知らないが、日本の若者が徴兵されるという、まるでテレビの中の出来事のような夢であった。
 
 夢の中で、衆議院憲法審査会で安全保障関連法案を憲法違反とした長谷部恭男早稲田大学教授の論説が流れていた。政府は、集団的自衛権行使が日本の存立危機事態に限定されているから、集団的自衛権と言っても従来の個別的自衛権の範疇にあると説明する。しかし、自国を防衛する個別的自衛権と他国を防衛するための集団的自衛権は本質が全く違う。自衛隊が地球の裏側まで行って武力を行使したり、中東ホルムズ海峡で機雷掃海ができるというなら、自国の防衛に限定されるという表面上の理屈は全く理解されない。国会中継を見ても、政府は、日本の存立危機事態に該当するかどうかは総合的に勘案して判断すると繰り返し述べているが、政府が繰り返せばするほど、何をどのように判断するのかますます不明になる。
 
 弾薬の供与や発進準備中の戦闘機の給油は、他国軍隊と一体化した武力行使そのものであり、憲法が禁じているものである。憲法が禁じているとか禁じていないとかという論議とは別に、政府が認める後方支援は戦争の兵たんであり、まさに敵にとっては重要な攻撃目標であり、自衛隊の危険を増大させる行為そのものである。自国の安全保障環境が激しさを増しているので、集団的自衛権が必要というなら、限られた日本の防衛資源を全地球的に拡散し、危険にさらすのはまさに愚の骨頂ではないか。
 
全地球的に米国と行動をともにすればいざという時に助けてくれるとか、これまでも日米安保条約によって日本は守られていたのだからお返ししなければいけないという意見がある。しかし、米国は議会の承認がなければ軍事活動に踏み切らない。そのような事は考えたくないが、仮に、日本が北朝鮮や中国と事を構えた時に、米国が日本のためにそれらの国と戦う事を米国議会が承認するのか本気で考えた方がいい。日米安保条約についても、日本は米軍基地を提供し、湾岸戦争やイラク進攻に当たっても最大限の役割を果たしてきたではないか。日米安保条約によって日本が守られるのは当たり前である。集団的自衛権を成立させるなら、従来の日米安全保障条約も見直されるべきである。
 
 内閣法制局も機能不全に陥っている。歴代の法制局長官が国会答弁で集団的自衛権を憲法違反だと声をそろえて言うのは、現在の法制局が法制局の役割を果たしていないと言う指摘に他ならない。民主主義の危機というより立憲国家の危機である。
 
 安保関連法案が成立してしまうと、自衛隊員のリスクが極端に高まるので、多くの退職者が出ると考えられる。そう簡単に自衛隊に入隊者が増えるとも思われない。財政緊縮の折から、自衛隊員の待遇を良くすることも出来ないであろう。人が足りなくなれば、徴兵制は必然である。
夢の中で、政府はそれが日本の国土、日本国民を守る道だと説いていた。
 
 ここでハッとして目が覚めた。
 
 シェイクスピアの「真夏の夜の夢」は人間社会の様々な問題が妖精たちの活躍によってハッピーエンドに終わる人間愛に満ちた戯曲である。日本の政治の舞台にもシェイクスピア戯曲のオーベロンのような妖精王が出現し、現首相のように安易な解釈によって憲法を捻じ曲げるのではなく、必要であれば、堂々と国民の総意を経てきちんと憲法を改正し、日本を幸せな国に向かわせるような媚薬を振りまいてほしいと願いながらベッドから起きあがった。
 
 暑い夏は大好きだが、今年の夏は本当に暑苦しい。涼しい夢が見たいと願う。
 
平成27年8月1日 理事長 森田隆
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