✎理事長ブログ
免疫を知ってコロナに立ち向かう:誰にでもわかる免疫の話
この2年間コロナ禍で忍耐を強いられています。国民の50%がワクチン接種を終え、新型コロナ感染の第5波も落ち着いてきて、非常事態宣言も解除の方向に向かっていますが、最近は3回目の接種も言われるようになりました。
コロナワクチンは、これまでのインフルエンザワクチンが抗体そのものを注射するのに対して、我々の体内で抗体を作るメッセンジャーRNAという遺伝子を注射します。筋肉に注射するのは、筋肉細胞が抗体を作るのに一番適しているからです。コロナウイルスを例にとって免疫の話を簡単にお知らせします。
1.免疫とは
免疫とは外部から侵入するウイルスを除去する仕組みです。免疫には、生まれた時から体に備わっている「自然免疫」とワクチン投与などによって体内にウイルスに対する抗体を作って、ウイルスが侵入してきた場合に効率よく排除する「獲得免疫」があります。
2. 自然免疫と獲得免疫
自然免疫の主役はマクロファージや好中球のように外から侵入したウイルスを食べて破壊する免疫細胞(食細胞)です。
獲得免疫とは体内に侵入したウイルスに対する抗体が出来る事によって獲得される免疫で、その主役は抗体を作る指令を出すT細胞と実際に抗体を作るB細胞です。また、T細胞にはT細胞自体がウイルスを攻撃する働きもあります。
3. 獲得免疫
獲得免疫には細胞性免疫と液性免疫があります。細胞性免疫とはT細胞自体がウイルスを攻撃する免疫で、液性免疫とはB細胞が抗体を作りウイルスをやっつける免疫です。従って、ワクチンを打ってから抗体が出来るまでに約2週間かかります。また、抗体によってウイルスが消失してからもB細胞の一部は「メモリーB細胞」となり、次にウイルスが入ってきたときに抗体を産生する能力を持ち続けます。
4. 細胞性免疫と液性免疫の違い
細胞性免疫では免疫細胞が直接ウイルスを攻撃しますが、液性免疫では抗体を作ってウイルスに対抗します。液性免疫で作られる抗体は細胞外のウイルスに対して働くもので、ウイルスが細胞内に入ってしまうと認識できないため、細胞内に入ってしまったウイルスに対しては細胞性免疫が働きます。
コロナウイルスは細胞内に入りやすいため、細胞膜が弱い糖尿病患者などで重症化しやすいのはこのためです。従って、コロナ感染症に対するには細胞性免疫も非常に重要です。
5. T細胞
細胞性免疫はT細胞という免疫細胞が主体です。抗体を産生するのではなく免疫細胞自体がウイルスを攻撃します。T細胞は「ヘルパーT細胞」「キラーT細胞」「制御性T細胞」に分けられます。実際に攻撃するのはキラー細胞ですが、この3つのT細胞が協力してウイルスを排除します。
6. コロナワクチンについて
コロナワクチンが筋肉に注射されると筋肉の細胞内で、コロナウイルスが人に感染する時に働くタンパクが一過性に大量に製造され、中和抗体(液性免疫)とT細胞(細胞性免疫)が作られます。つまり、ワクチンは液性免疫と細胞性免疫の両方を作り出します。
ワクチン投与後6か月を過ぎると中和抗体濃度が低下する事から、3回目の接種がとり正されています。コロナワクチンの効果は、1.罹らない事、2. 罹っても重症化しない事、にあるので、重症化しないためにはT細胞の細胞性免疫が低下しているかどうかの方がより大きな問題です。また、抗体価が下がったとして3回目のワクチンを打った場合、メモリーB細胞の効果で抗体が過剰に産生されてしまう恐れもあります。
このようにコロナワクチンは試行錯誤を重ねながら、これからも、我々はコロナウイルスと戦っていかなければなりません。