呼吸器コラム⑨
舌下免疫療法という「体質に働きかける治療」
アレルギー性鼻炎の治療には、抗ヒスタミン薬や点鼻ステロイドのように症状を抑える薬があります。
一方、舌下免疫療法は原因となるアレルゲンを少量ずつ体に慣らすことで、アレルギー反応そのものを起こりにくくする治療です。
対症療法とは異なり、アレルギーの免疫反応に長期的に働きかける点が特徴で、現在のアレルギー診療ガイドラインでも有効性が確立した治療法として位置づけられています。
日本では主にスギ花粉症とダニによる通年性アレルギー性鼻炎が対象となります。
舌下免疫療法は、検査で原因アレルゲンが確認された患者さんに対して行います。
一般には特異的IgE抗体がクラス3以上で、症状との関連がはっきりしている場合に保険診療の対象となります。
つまり「花粉症らしい症状がある」だけではなく、血液検査などで原因抗原が確認されていることが重要です。
この点は通常の薬物療法と少し異なり、治療開始前にアレルゲンの同定が必要になります。
治療は毎日1回、舌の下に薬を置いて吸収させる方法で行います。
舌下免疫療法は、最初の約1週間は少量から開始し、その後通常量へ増量して継続するという方法で進めます。
効果は数週間で劇的に現れるものではなく、長期的な継続が前提となる治療です。
一般に3〜5年程度の継続が推奨されており、この期間をしっかり治療することで、治療中の症状改善だけでなく、治療終了後も効果が持続する可能性があると報告されています。
実際の臨床研究では、舌下免疫療法によって鼻症状スコアが約30〜40%程度改善することが示されています。
また、薬剤使用量も減少し、抗ヒスタミン薬などの対症療法薬を使用しなくても過ごせる患者が約30〜40%程度に達するという報告があります。
すべての患者さんで完全に薬が不要になるわけではありませんが、多くの患者さんで症状の軽減と薬剤使用量の減少が期待できます。
近年、花粉症やダニアレルギーは年々増加しており、症状の発症年齢も若年化しているといわれています。そのため最近のアレルギー診療では、症状が強くなる前の段階から免疫療法を開始する考え方が広がっています。いわば「悪化してから対処する」のではなく、「早い段階から体質に介入する」という考え方です。
舌下免疫療法は5歳以上から開始可能であり、小児でも安全に行える治療です。特にダニアレルギーは幼少期から長期間続くことが多く、早い段階で治療を始めることで将来的な症状の軽減や薬剤使用量の減少につながる可能性があります。このため現在では、小児期から舌下免疫療法を検討するケースも増えています。
なお、スギ花粉の舌下免疫療法は花粉飛散期には開始できません。
そのため当院では、花粉シーズン終了後の7月頃から新規導入を開始しています。開始時には、最初の1週間のみ少量投与を行う「初回導入キット」を使用し、その後通常量へ増量して治療を継続します。
森田記念クリニックでは舌下免疫療法を行っています。スギ舌下免疫療法は初回導入キットの準備が必要なため、新規開始は事前予約制としています。
また、すでに他院で舌下免疫療法を開始されている患者さんの継続治療にも対応していますので、ご希望の方は診察時にご相談ください。
