呼吸器コラム⑪
嚥下機能を保つ体操
嚥下機能を保つ体操
CTAR(Chin Tuck Against Resistance)
年齢とともに
食事中にむせる
水を飲むと咳き込む
食後に痰が増える
といった症状がみられることがあります。
こうした症状の背景には、嚥下(えんげ)に関わる筋肉の衰えが関係していることがあります。
嚥下機能の低下は、誤嚥性肺炎の原因の一つでもあり、呼吸器内科でも重要な問題です。
嚥下機能を維持するための体操として、近年よく行われている運動の一つが
CTAR(Chin Tuck Against Resistance)
です。
CTARとはどのような体操?
CTARは
顎の下に抵抗をかけて顎を引く体操です。
顎の下には
舌骨上筋群(suprahyoid muscles)
という筋肉があります。この筋肉は
喉頭(のど)を持ち上げる
食道の入口を開く
といった嚥下に重要な働きをしています。
この筋肉が弱くなると、飲み込む力が低下し、食べ物や唾液が気管に入りやすくなります。
CTARはこの筋肉を鍛えるための運動です。
研究では、CTARは嚥下に関わる舌骨上筋群を効果的に活性化する運動であることが報告されています。
CTARのやり方
椅子に座ります
顎の下に
小さなボール
タオル
手(指)
などを置きます
顎を胸の方向へ引きます
抵抗をかけながら5秒ほど保持します
これを10回程度繰り返します
無理のない範囲で、1日2~3セット行うとよいでしょう。
実際の動作(動画)
以下の動画で動きを確認できます。
CTARのエビデンス
CTARは比較的新しい嚥下リハビリですが、複数の研究で有効性が報告されています。
主な研究結果は次の通りです。
舌骨上筋群の筋活動を強く刺激する
嚥下機能を改善する可能性がある
身体負担が少ない
と報告されています。
また、嚥下障害をもつ患者を対象とした研究では、CTARを行うことで
誤嚥の減少や嚥下機能の改善がみられたと報告されています。
誤嚥性肺炎の予防
嚥下機能の低下は
誤嚥性肺炎
栄養低下
フレイル
などにつながる可能性があります。
呼吸器内科では、肺炎の治療だけでなく
肺炎を予防するための嚥下機能の維持
も重要と考えています。
CTARのような簡単な体操を日常生活に取り入れることは、
嚥下機能を保つ一つの方法として役立つ可能性があります。
お薬による治療について
嚥下機能の低下に対しては、体操などのリハビリだけでなく、薬物療法が用いられる場合もあります。
漢方薬の一つである
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
は、咽喉頭の違和感や嚥下機能低下に対して用いられることがあり、嚥下反射の改善や誤嚥性肺炎の予防に関する研究報告もあります。
例えば、高齢者を対象とした研究では、半夏厚朴湯の投与により嚥下反射時間の改善や誤嚥性肺炎の発症減少が報告されています。
ただし、すべての方に適しているわけではなく、体質や症状に応じて処方を検討する必要があります。
嚥下の衰えやむせ込みが気になる場合には、体操だけでなく、薬物療法も含めて対応できることがあります。
内服治療を希望される場合は、当院までお気軽にご相談ください。

