本文へ移動

✎理事長ブログ

理事長のボーナス「誰も気づかなかった介護の真実」の感想

2012-07-10
 本年2月「誰も気づかなかった介護の真実」を出版した。職員個人の入所介護疑似体験を纏めた本であるが、職員からは「体験したのは自分であるが、本に纏めた事によって、100人分の異なった体験ができ、100人の異なった感性が享受できた。体験を本にしていただいて本当に嬉しい。」、また、本を読まれた多くの方からも「この本は介護に携わる者にとってバイブルになる。お年寄りを抱えた家族にとってもとても役立つ本である。ある大学の教授からは「医療介護の学生教育の教科書にしたい。」等々、身に余るほどのお褒めの言葉をいただいた。更には、本を読んで入所を希望される利用者も現れた。
 しかし、人は忘れるものである。疑似体験後、確かに、施設の介護のレベルは上がったが、最近、体験の効果が薄れてきているなあと思う事が散見されるようになった。疑似体験を未だ経験していない新しい職員が、4月から入職した事もその一因かもしれない。
そんなふうに感じていた時、須田副施設長から「理事長、介護の真実を読んでいないと思われる職員がいるので、読むように強く言っていいですか。」という申し出があった。例によって、「オーそれは良い考えだ。疑似体験を思い出してもらうためにも、感想文を書かせることを義務にしよう。」と言った。職員に感想文を書いてもらって、大正解。やったね!というのが私の感想。
 
 感想文の中の心に残った一章を紹介しよう(原文のまま)。
 
「この本を読んでの感想として私が一番に思ったことは、一年半近く前に経験したことなので、その時の気持ちを大分忘れたなという反省に似た気持ちだった。」
 
「濡れたオムツがあたっている不快感やしゃべれないもどかしさ、体の一部が動かない事の不自由さなど、当時はこれを忘れずにいようと思っていた事が少しずつ忘れつつあるなと再認識したことが自分の中では大きかった。」
 
「車イスでうなだれていた私の肩に手を差し伸べて優しく声をかけてくれた職員に涙が出そうになった事、ベッドに臥床させられ腰の痛みに寝返りしたいと思っても出来なかった事、オムツに排尿する恥ずかしさ、廊下の足音を聞いて早くここにきて欲しいと心で叫んだ事、これらの事を私は忘れない。」
 
「先に本を読んだのは同じ仕事をしている母が読みました。最初に口にしたのは「あんたの施設は良い施設だね。ママの施設とは大違い。あんたの施設ではこんなに色々な事をさせてくれるんだ。」とびっくりした様子でした。私はほかの施設を知りません。母の反応にビックリしました。お祭りや喫茶店、施設まで来てくれるお店、居酒屋には驚きましたが、いろいろな行事が当たり前にあります。でもそれは当たり前ではなく特別な事だと知りました。それは他の施設の利用者の方より笑顔になれる回数や楽しいと思える時間が多いのかなと感じました。そう思うと嬉しくなりました。」
 
「自分は施設で祖母を看取ってもらいました。この本ができて、祖母がなくなった後ですが、両親にもこの本を読んでもらいました。ちょっと来てくれと両親から呼ばれました。父は泣いていました。嘉紀はスゴイところで働いている、誇りを持て、ばあさんは幸せだった、プロスペクトに入れて本当に良かったと話してくれました。」
 
「再度読み返して一番いいなあと思ったのは、読み終わって心があたたまる事です。また、しばらく経ったら読み返し、自己鍛錬に励みたいと思います。」
 
「時折この本を読み返し、記憶の中でまた体験を繰り返したいと思いました。」
 
そして、4月に入社した新人の職員は「本を読んで、疑似体験をする時が待ち遠しい。」という感想を書いてくれた。
感想文を書かせる取り組みは、職員に介護疑似体験を思い出させただけでなく、「誰も気づかなかった介護の真実」の出版が職員の心の財産になっている事を教えてくれた。最近書籍離れが言われているが、本の持つ意味をも再認識させられた。
 7月10日、今日は職員の夏のボーナス支給日。私には、職員の施設に対する思い遣りや職員の優しい心がたくさん詰まった感想文が、夏のボーナスになった。
 
 暑い夏を待ち焦がれる。
 

平成24年7月10日 理事長 森田 隆
TOPへ戻る
【ひたちなか市の介護】介護・リハビリ・認知症でお困りの方は森田記念会におまかせください。